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解けた記憶

 昨日は昼から銀座で開かれている「山本じん展」にうかがう。久しぶりにウルトラQで共演した『雛』に合う。相変わらず美しい。僕とじんさんとは同じ歳。作品を前にアートな時間を満喫する。昼食がまだだったのでギャラリーの方に何処がいいか伺うと、「隣のレストランが美味しいですよ!」とのことでそのレストランに行く。

レストランの名前は『煉瓦亭』。・・・店構えがなぜか記憶にある・・・思い出そうとするが思い出せない・・・お店のドアーを開く「・・・見たことがあるナァー・・・」店内を見渡すが思い出せない。「いらっしゃいませ、何にいたしましょう?」「アッ・・・あの・・・このお店昔からあるんですか?」「創業が明治28年です」「明治・・・明治はさすがに生まれてないし・・・・・・そうだ!!!オヤジが映画の撮影をしたお店だ!」思わず声が出てしまう。「どうなさいました?」全身に鳥肌が立っている。「イヤッ、あのッ、僕このお店来たことあるんですよ、50年ぐらい前に、あそこのテーブルでスープを飲んだんです」「50年前?スープを?」店員さんは明らかに怪訝な顔をしている。「イヤッ失礼。そうだな~サンドイッチとコーヒーお願いします」。こんなことがあるなんて・・・

僕が幼稚園の頃、父が撮影現場を見せてくれた。記憶に残るのは、銀座という言葉。初めて行ったレストラン。怖い父の顔。撮影現場の緊張した空気。そこで飲んだスープ。かえり送ってもらった自動車で気持ちが悪くなったこと。作品名は『銀座のしいのみ』ということ。
なぜ作品名が判ったかと言えば、一昨年新橋にある『東京国立近代美術館フィルムセンター』から一通の手紙をいただいた。中には『逝ける映画人を偲んで』というタイトルで、父の作品を上映するのでいらっしゃいませんかと言うお誘いだった。ちょうど舞台の稽古で東京に居たので観に行った。
モノクロの作品で銀座のレストランの少年を主人公に物語は進行する。その中にレストランのシーンが出てきた。見覚えのある店内。あの時撮影を観に行ったレストランかな?と思うが確信は持てなかった。と、食事をしている親子が写る。「エキストラ」だ。セリフがあるわけでもなく食事をしているだけ。横顔しか写らないがどこかで見たことのある子だ。誰だ???・・・カットが変わってその子どもの顔が見えた!!!そこには僕が写っていた。幼稚園の僕が。スクリーンの僕は恥ずかしそうにスープを飲んでいる。カメラの前に出たことはまるで記憶になかった。

 レジに行くと蝶ネクタイをした上品なご主人が居た。歳は僕より10歳ぐらい上の感じだ。「あのォーこのお店で50年ぐらい前に映画の撮影がありませんでしたか?」「映画?・・・アーァわたしも子どもだったけど、撮影してましたねェ~」「その時僕来たんです!スープを飲んだんです!」記憶を一気に吐き出した。ご主人の口元がかすかに微笑んだ。「そうですか、それはよくいらしてくださいました」

 外に出ると、もう一度店を見上げた。僕の記憶に焼き付けるために。

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ぼやき」カテゴリの記事

コメント

お誕生日に、とても素敵なひと時を過ごされたんですね。
或いは偶然なのかもしれませんが・・・、
私には、お父上のお導きのようにも思えます。
小さな子供の頃は、誕生日といえば両親が祝ってくれるのが当たり前、と感じていましたが・・・、
いつの頃からか、1年無事に過ごせたことに感謝の気持ちを持てるようになり、
私の誕生日は私を生み、育ててくれた両親に感謝する日になりました。
また、息子が生まれてからは、1年、また1年無事に時を重ね、
ゆっくりではあるけれど確実に成長する彼のすべてに「ありがとう」の気持ちを込めて、
彼の誕生日を祝います。
日ごろ未だに両親に甘え、我が儘ばかりの私でさえそうなのですから・・・。
孝行息子のお誕生日を、お父上も共に過ごされたかったのではないかしら・・・?

思い出のレストラン・・・、もしかしたら其処には
・・・他の誰にも見えないけれども・・・
今も変わらず我が子を愛するお父上の姿があったのではないでしょうか。

投稿: Qまま | 2005/03/24 01:03

堀内さん!本当にご無沙汰しています。洋治です。僕も最近ブログを始めたのでいろいろ彷徨っているうちにたどりつきました。
お元気そうでなりよりです。
ひさしぶりでお会いしたいですね。

投稿: 松田 | 2005/03/24 02:55

本当にお誕生日に
関西でいう「さぶいぼ」ものの体験ですね・・・

凄いドラマじゃないですか!
こんなことってあるんだー
堀内さんの廻りは凄い素敵だなあと思う。

ついでにチクりますけど、
週刊ゴング立ち読み(買えよ
したら
兜王ビートルの映画の紹介ありましたけど、
堀内さんの紹介がまったくないのが
納得いきません!
失礼だ!プンプン!

・・・ただ
もしかすると
集合写真でのお姿が
あまりに素晴らしいので笑
気がつかなかった?のかな?

すざましいずっこけぶりです笑
まさに役者魂ですねー

投稿: 旅の者 | 2005/03/24 06:11

不思議なことってありますよね。
じつは、昔々にやったATGの映画「北村透谷・わが冬の歌」に
出演した時も不思議な体験してるんです。
僕の役は「山路愛山」。実在した方なんですが・・・その方の霊が・・・
イヤッ、これは話すと長くなるので、改めてBLOGに書きます。
みなさんの不思議体験も教えてくださいね。

松田洋治君コメントありがとう!
「洋治君」て呼びにくいんでいつもどうり「洋ちゃん」って呼びますね。
洋ちゃんと一緒に舞台をやったのが、東京芸術座の「ゆずり葉」だから、もう10年以上経つね。
なかなか同じ仕事で会うことがないね。芸風が違うからかな!?(笑)
でも、洋ちゃんもどちらかと言えば変わった役柄が多いよね。
東京に行ったとき必ず連絡します。

「松田洋治君」のHPなかなか素敵ですからみなさん訪問してあげてくださいね。
http://www.h5.dion.ne.jp/~youjimat/


投稿: 堀内正美 | 2005/03/24 17:01

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» 煉瓦亭 [あ~るの日記@ココログ]
銀座の老舗洋食屋『煉瓦亭』で、コンソメスープ(左)とポークカツレツ(右)を食べた。ちょうど今、池波正太郎の『食卓の情景』を読んでいるが、この中ので『煉瓦亭』のポークカツレツを紹介している。中でも特製大カツレツ(写真は普通のポークカツレツ)は『煉瓦亭』の看板メニューで、皿から溢れるほどの大きさがある。学生時代にはじめて『煉瓦亭』に来た時に食べたが、確かに大きかった。池波正太郎は「私も若いころは、これを三枚は食べたものだ。」と書いているから、よほどの大食漢だったのだろう。最近、よく一緒に注文するのが、写... [続きを読む]

受信: 2005/06/20 23:10

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